無題

 北欧と言うと福祉が行き届いているという見方がされがちですが、僕は果たしてそうだろうかと思うのです。声をあげられない人たちにはそれほどでは無いのです。

 身体的障害者の要求の通り方のほうが、精神・知的障害の人達の要求よりも通りやすいと言われています。

 声を上げなければふりむかれない、要求するには組まなければということで、色々な団体があります。

 その一つである認知症の人たちの会から、10数年前の事ですが、集会のときに折り紙を教えて欲しいとの連絡がありました。その頃折り紙を知っている人はあまり居らず、声がかかったのは家内が作った折り紙の本を図書館で誰かが見たのがきっかけとの事でした。

 初めて折り紙を見る人が作るのだからということで、やさしいものを幾つか選んで、サンプルを持って行きました。カラー刷りの広告の紙を正方形に切ったものを配り、折り紙細工というのは大半が正方形の紙で作るのですが、そのような正方形の折り紙用の紙を買うのはラハティでは難しいので、広告の紙から自分で作ればいいのです。あとでその作り方を教えますからということではじめました。

 さて、どれを作りましょうかとサンプルを見せて尋ねても反応がないのです。黒板を机に見立て作って見せ、一緒に作ってみましょうか、と呼びかけました。まず半分に折ってくださいと、折って見せました。しかし誰も真似をして折ろうとせず、隣の人と話しを始める始末で、全然興味を示してもらえませんでした。

 

そこで、大急ぎでおって作った嘴をパクパクし、

“みなさん、あまり興味がないようだから、僕帰ります”と言うと。それ、教えてくれと何人もの人から声がかかりました。初めて紙を正確に斜めに折るというのは難しいはずですが、何人もが頑張って仕上げてくれました。やりたいと思うと頑張りが利くものらしいですね。

 

“ありがとう、これはいい、孫と遊べる”と言ってくれました。